同じ基盤で、それぞれの顔を持つ
クライアント
GEM (Guest Engagement Manager) — アプリ不要のゲスト体験プラットフォーム
会社: Tabi Life株式会社 · 2025年ローンチ
担当範囲: 機能ロジック・フロー・UXの再整理/画面の再設計と最適化/ユーザーフロー構築/CMSの構造と操作性の設計/開発チームとの調整・デザインQA監修
1. 課題
当社はSmartphone Conciergeを約400施設で運用していた。ビジュアルは単純で、アイコンを基礎に構成され、色は固定。プロダクトは古びつつあり、複数の施設から「もっと現代的に見えるものを」という要望が出始めていた。
プロダクトが解決すべき、業界側の課題:
| 課題 | |
|---|---|
| 人手不足 | 採用難と離職により人員が不足し、現場の運用に過度な負荷がかかっている |
| 言語の壁 | 外国人スタッフや外国人ゲストとの間で、行き違いや摩擦が生じる |
| 効率の死角 | フロント業務の負荷と所要時間が数値化されておらず、どこを改善すべきか判断できない |
| 販促の不在 | 滞在中のゲストに向けた訴求がなく、再訪につながる機会を逃している |

2. 調査
「もっと現代的に」という漠然とした要望に対して、まず問うことにした。調査はプロダクトの2種類の利用者それぞれに対して行った。導入施設へのアンケートで主要な論点と関心の所在を特定し、現地でのゲストアンケートでエンゲージメントを測定し、ニーズを探った。後者からは、口コミ機能、チャットボット、その後追加された機能の多くが生まれている。
発見: 最も多かった要望は機能ではなく、ブランドに関するものだった。 Smartphone Conciergeは色が固定され、ライトスキームひとつしか持っていなかった。施設が求めていたのは、ダークスキーム、ゲストの端末設定への追従、そして何より自社のブランドカラーを使えることだった。
22日間の実地トライアルにより、現場での効果を確認した。
| 観察 | 意味 |
|---|---|
| ゲストが自ら進んでQRコードを読み取るようになった | 受け身の応対から、自分で動く体験へ |
| 問い合わせが減少。特に外国人ゲストからの問い合わせで顕著だった | 言語の壁の低減と、スタッフの時間の節約 |
| 改善がデータに表れることで、スタッフに安心感が生まれた | 定性的な成果がチームの自信につながる |
| 管理画面に対する現場スタッフの運用満足度が高い | スタッフ自身がPDCAを回すための土台になる |
3. 判断
クライアントのアイデンティティを、プロダクトの一部として扱うことにした。サービスをアイコンではなく画像を基礎に再構築するのに加えて、CMSにライト/ダークモードと、施設自身が設定できるアクセントカラー・ブランドカラーを組み込んだ。ひとつのプラットフォームに、クライアントごとに異なる顔を持たせる構成である。
根底にある考え方はデジタル・ホスピタリティだ。人にしかできない温かい対面の応対はスタッフが担い、情報・言語・効率・販促・データはテクノロジーが引き受ける。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 導入の壁をなくす | アプリのダウンロード、会員登録、個人情報の入力を不要とし、QRコードから直接アクセスする |
| 言語を意識させない | スマートフォンのOS設定に応じて表示言語が自動的に切り替わる。6言語に対応 |
| ひとつの基盤で広げる | 単一のコンテンツ基盤と単一のCMSのまま、プロダクトを分岐させずに対象を広げる |
4. 改善サイクル
| 段階 | 課題と対応 | 担当 |
|---|---|---|
| GEM 基盤の再設計 |
画像を基礎としたサービス構成、視覚的な階層、予約機能の拡充、CMSから設定できるブランディング | 画面の再設計・UXの見直し・導線の短縮・CMS改善 |
| GEM Icons 移行版 |
画像を基礎とした再設計により、画像素材を持たない既存クライアントが取り残された。CMSが旧システムのアイコンを自動的に読み込む仕組みとし、クライアントは手持ちのコンテンツのまま移行できるようにした | 機能・フロー・UXの整理/画面設計/CMS最適化 |
| 機能拡張 | 施設のサービスとアプリ自体への口コミ、アンケート、AIチャットボット、クーポン、ワンクリックでの6言語翻訳、紙の案内物を置き換えるチェックイン連携のShortcut Button | 機能設計/CMS設計 |
| GEM 2.0 | 同一のCMSから、ゲストマネジメントのプラットフォームとしても、モバイル・デスクトップ両対応の施設ウェブサイトとしても機能する構成へ | 機能・フロー・UXの再整理/ユーザーフロー構築/CMS設計 |
4段階すべてにおいて、開発チームとの調整とデザイン面のQA監修を担当した。
5. 成果
| プラットフォーム全体 | |
|---|---|
| エンゲージメント率 | 68% |
| 平均利用時間 | 1分40秒 |
| 対応言語 | 6 |
| 稼働開始 | 数日 |
| 導入事例:同一グループ3施設 | 月あたり |
|---|---|
| チェックイン利用率 | 50% |
| 業務時間削減(1施設) | 約42時間 |
| 説明コスト削減(1施設) | 約350 USD |
プロダクトは宿泊業以外にも広がった。イベント・カンファレンス、飲食、小売、ウェディング、化粧品、地域情報。
考え方
求められていたのは機能ではなく、自分らしさだった。 What they were asking for was not a feature. It was to look like themselves.