5つの役割が互いを止めないための設計
クライアント
MenyGo — QRモバイルオーダー・決済・デリバリーシステム / 明治神宮球場
会社: Tabi Life株式会社 · 2024年開発 – 2025年本稼働 – 2026年拡張
担当範囲: UI・UXデザイン(主担当)/2025年改善サイクルにおけるプロダクトマネジメント
※本案件の一部データはクライアントの意向により非公開としています。
1. 課題
球場では、需要がごく短時間に集中する。2025年シーズンでは注文の48%が試合開始のタイミングに発生した。観客は列に並ぶために席を離れない。飲み物ひとつのためにアプリをインストールする人もいない。決済は、試合中にやり直す機会がないため、一度で成立しなければならない。

2. ユーザー
5つの役割が、同じピークの中を、それぞれ異なるリズムで動く。
| ロール | 役割 |
|---|---|
| 観客 | 自席のQRコードを読み取り、ブラウザ上で注文・決済する。ダウンロードも会員登録も不要 |
| キッチンカー | 注文を受け、調理し、メニュー・出店可否・1日の対応可能数を管理する |
| 配達スタッフ | 注文を担当し、客席まで届ける |
| 運営管理 | 球場と運営会社。物流、配達スタッフの管理、運用と売上の把握 |
| プラットフォーム管理 | Tabi Life。キッチンカーと配達スタッフの登録、権限管理、決済ゲートウェイとの連携 |
観客は秒単位で、キッチンカーは調理時間で、配達スタッフは移動距離で、運営はシフトで、プラットフォームはシーズン単位で時間を計っている。
3. 判断
課題は5つのインターフェースを作ることではなく、全員が同時に動く状況で、ある役割が別の役割を止めてしまわないようにすることだった。個々の設計判断は、それぞれ詰まりの起きる箇所をひとつずつ切り離している。
| 詰まる箇所 | 判断 |
|---|---|
| 観客が自分の席を離れてしまう | 自席からQRで注文。アプリも会員登録も不要 |
| 1件の注文が配達スタッフ待ちで滞る | 配達スタッフは注文をまとめて担当することも、店舗ごとに分けて担当することもできる |
| 2人の配達スタッフが同じ注文を取る | 担当した時点で即座にシステム上へ反映される |
| キッチンカーの処理が飽和する | 商品ごとの1日あたり販売上限と、メニュー全体の一括ON/OFF |
| 調理待ちと受取待ちが混ざる | 「受取準備完了」をワンタップで切り替え、2つの列を分離 |
4. 実装
2025年 — シーズン中のPoC。 3回の改善サイクルを実施した:それまで存在しなかった破損商品の処理フロー、グッズ販売、キッチンカー向けネイティブアプリ、安定性の向上。座席のカバー率は同一シーズン内で+770%に拡大した。1回目のサイクルは私の入社前であり、2回目と3回目にデザイナー兼PMとして参加した。
2026年 — 拡張。 今後の試合に向けた予約注文、複数のキッチンカーからの商品を一度の注文でまとめて購入、運営会社側に集約したメニュー管理画面、2段階のアップセル設計。
5. 成果
| 指標 | MenyGo 2025 | 業界水準 |
|---|---|---|
| 注文のキャンセル率 | 0.36% | 2〜6% |
| 破損した注文 | 0.06% | 1〜2% |
| システムのバグ | 0.30% | — |
| オンライン決済の不具合 | 0.36% | — |
| 運用トラブル総合率 | 約1.7% | 10〜15% |
シーズン中に報告された問題のうち、85%がシーズン内に解決した。
出典: 国土交通省 · McKinsey · Capgemini · Bloomberg/WSJ · Deliveroo UK 2023年品質監査 · Uber Engineering · ParcelLab。なお、球場は移動距離が短く、席が固定され、交通の影響を受けない限定的な環境であり、この条件は都市部のデリバリーと比べて指標に有利に働く。本結果は、管理された環境におけるPoCとして提示している。
考え方
同時に動く役割を、互いに待たせないこと。 Roles that operate at the same time should never have to wait for one another.